①申請の受付が断られるが、是正可能な場合
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- 添付書類に不備がある場合
- 通常は窓口受付段階で、是正指導が入ります。
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- 境界杭を設置していない場合。
- 野田市職員が現地確認した際、杭を確認するので予め杭があることが必要です。
- ない場合は、確定測量まであれば良いですが、せめて現況測量は必要となります。
②申請の受付が断られる、または不許可になる場合
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- 申請地がすでに農地の状態でない場合。無許可で現状を農地以外にしている場合。
- 許可申請前に、現状回復が必須となります。
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- 農業委員会の要注意リストに入っている場合。
- 過去に違反行為※などを行った場合や、工事完了報告義務違反を繰り返した場合などは、リストに記載される可能性があります。
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- 事業計画に記載のとおりに、計画を確実に実行できると認められない場合。
- 融資証明が間に合わなかった場合など資金不足が明白な場合や、他法令の制限で実現不可能な場合などがこれに当たります。
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- 隣接農地所有者の承諾がない場合。または近隣農地所有者への説明が不十分と農業委員会に判断された場合
- 今後争いに発展するおそれがあるものは、許可を出した農業委員会や窓口(市役所)等も巻き込まれるので、許可が下りないケースがあります。
※違反行為の内容となる犯罪行為について
農地を許可なく、常識的に考えて農作できる状態でない状態にすることを指します。つまり、建築を完成させなくても、その下地を作ったことで農地でなくなった場合などがこれに該当します。
参考までに農地法上の違反行為が示された判例を記載します。
農地法上の違反行為が示された判例
農地法第4条1項違反の内容となる犯罪行為は、都道府県知事等の許可を受けなかったことにあるのではなく、許可を受けることなく農地を農地以外のものにする行為、即ち無許可で農地を潰廃する事実行為をなすことをいうものと解すべきであり、農地を農地以外のものにしたというためには、行為者がこれを宅地化する目的をもっている場合であっても必ずしも家屋建築工事に着手する必要のないことはもちろん完全に宅地としての外観を整えることも必要でなく、農地をもはや農地として使用できないようにすること、即ち肥培管理を不能若しくは著しく困難ならしめ、耕作の目的に供せられる土地とはいいがたい状態にすることをもって足りるものといわなければならない。
(昭41.5.31 最高三小39(あ)1111 刑集20-5-341, 判時451-52, 判夕202-155)
農地法4条1項違反の犯罪行為がなされたとするには、必ずしも家屋建築工事に着手する必要のないことはもちろん、完全に宅地としての外観を整えることも必要でなく、農地をもはや農地として使用できないようにすること、すなわち、肥培管理を不能もしくはいちじるしく困難ならしめ、耕作の目的に供せられる土地とはいいがたい状態にすることをもって足り、その時から公訴の時効は進行を開始する。
(昭41.5.31 最高三小39(あ)1111 刑集20-5-341, 判時451-52, 判夕202-155)
各市区町村の農業委員会・窓口職員は、許可申請を不受理にする権限を持っているのか?
農業委員会への許可申請をする書式からもわかるとおり、千葉県であれば申請先は「千葉県知事 鈴木栄治様」です。許可申請の内容を判断するのは、あくまで都道府県知事であり、許可・不許可処分を下すのも都道府県知事ということになります。
つまり、各市役所、区役所、町村役場にある農業委員会の窓口は、許可申請を不受理にする権限を持っていおりません。ということは、どんな申請内容であれ、法律的には全て受理しなければならない立場にあるのです。
しかし、その原理原則のみを強行に適用してしまった場合、各市区町村から毎月提出される申請全てを、都道府県の職員が確認し、その農地転用申請内容の是非を、全て確認しなければならないことになります。
農地転用申請内容の是非とは、すなわち現地確認です。これをいちいち都道府県レベルの職員が行っていたのでは、到底2ヶ月の審査期間内に許可を発行することはできません。
また、申請書や添付書類の書面上の不備まで確認するのでは、人員不足となるのは火を見るより明らかであり、現行法上で事務を円滑に処理する(=許可申請に対し早く許可証を発行する)ためには、現場レベルでの確認チェック機能がどうしても必要となります。
よって、形式的には判断権限はなく、実質的にはある程度の判断権限を持たされているようです。しかし、この点を訴えた事件もありますので、以下記載します。
農地転用許可拒否処分取消等請求控訴事件(埼玉県春日部市)
判例要旨
農地法5条1項に基づく農地転用許可申請において、次の2点が明示されました。
- 農業委員会は,県知事と別個独立の行政機関であり,県知事の一機構とはいえない。
- 農地法5条1項の農地転用許可手続における農業委員会の権限は,提出された許可申請書を審査し,意見を付して県知事に送付するにとどまり,形式的要件の不備を理由として,許可申請書の受理を拒絶する権限はない。
事例要旨
パチンコ遊技店を経営する法人が、市農業委員会に行った農地転用許可申請を必要書類の不足を理由に受理されなかったことから、県知事に対し、主位的請求として不受理処分の取消を、予備的請求として申請に対し相当期間内に処分しなかったとして不作為の違法確認を求めた事案において、農業委員会は知事の一機構ではなく、農業委員会から知事に申請書が送付されていないため知事の処分は存しない等として、不受理処分の取消が認められなかった事例。
事案の概要
パチンコ遊技店を営むX(法人)は、パチンコ遊技店の駐車場として利用するため、土地(以下「本件土地」という。)を所有者から期間3年間の賃借権の設定を受けたうえ、平成18年7月3日、Y(知事)に農地法5条に基づく農地転用許可申請(以下「本件申請」という。)を行った。
なお、本件申請にかかる申請書は、政令の規定に基づき、農業委員会に提出された。
農業委員会は、Xに対し、平成18年7月31日、「本件申請書には土地改良区の意見書、排水放流承諾書、農用地除外証明書が添付されていないため受理できない。」旨の通知を交付して、本件申請を受理しなかった(以下、「本件受理拒否行為」という。)。
このため、Xは、本件受理拒否行為に対し、平成18年9月15日付でYを審査庁とする審査請求を行ったが、Yは、同年11月9日付で同審査請求を却下する旨の裁決をした。
これを不服とするXは、「市農業委員会は農地転用許可の判断権者であるYの一機構であり、本件不受理行為はYの行為と評価できる。」と主張し、Yに対し、主位的請求として本件申請の受理を拒否した処分の取消を、予備的請求として、農地転用許可申請がありながら、許否の判断を怠った不作為の違法確認をそれぞれ求めた。
これに対しYは、「農業委員会は独立した市町村の行政機関であり、その行為はYの行為ではなく、本件受理拒否行為には処分性はない。市農業委員会から申請書の送付はなく、XからYに直接の申請もないから、処分を行わなかったという不作為はない。」等と主張し争った。
判決の要旨
さいたま地方裁判所は、以下のように判示してXの訴えを却下した。
① 本件受理拒否行為がYの処分といえるかについて
法令上、Yには農業委員会の作為ないし不作為につき是正する権限はなく、両者は指揮命令関係にはないものと解される。
農地法施行令が、農地法5条の許可申請書を農業委員会を経由して提出することとしたのは、農地転用の許可権者たるYが、当該申請につき適切な判断をするにあたり、地域農業に精通する農業委員会の意見を聴取するのが相当としたためと解される。
農業委員会とYの有する各権限、両者の関係及び審査手続きに照らすと、農業委員会をもって都道府県の一機構とみることはできない。
本件申請は、Yを名宛人としてなされたものであるが、農業委員会からYへ申請書の送付はないことから、本件においてはYに対する申請はなく、本件申請に対するYの処分は存しない。
この点、Xは、農業委員会には独立の処分権限がないことから、農業委員会はYの一機構であり、本件申請の受理拒否行為はYの行為と主張する。
しかし、独立の行政庁が諮問 機関としての立場で意見を述べるにとどまり、国民に対する関係で独自の処分を行う権限がない場合は他の法令上でもみられることであり、対外的に独自の処分権限がないことをもって、必ずしも農業委員会がYの一機構であるということにはならない。
農業委員会は、Xに対し、本件申請を受理できない旨の書面を送付しているところ、同書面には、相当期間を定めて補正を促す旨の記載等はなく、申請を却下する最終的な意思を表示したものと評価できる。
農業委員会にこのような処分を行う権限があるか検討すると、農地転用許可事務は本来国の事務であるが、都道府県知事に法定受託されたものであって、これにより都道府県知事は、必要的添付書類の有無を含めた申請の適法不適法、許可の適否につき判断する権限が与えられたものと解されること、施行令が農業委員会の送付義務を規定していること、法令は、添付書類の欠如等形式的な不備がある場合に、農業委員会が申請書の受理を拒否できる旨の明文の規定をおいていないことからすれば、農業委員会には、提出された申請書を審査し意見を付して都道府県知事に送付することができるのみであり、申請書の受理を拒否する権限はないと解すべきである。 以上、本件申請に対するYによる処分は存しないから、本件主位的請求にかかる本件訴えは不適法である。
② Yに不作為の違法があるかについて
本件において、農業委員会からYに対し、本件申請にかかる申請書が送付されたことはないのであるからYに本件申請に対する作為義務が発生することはない。
そうであれば、Xの本件申請に対する作為義務を前提とする予備的請求にかかる訴えは不適法である。
引用元
さいたま地方裁判所 平成19年9月26日判決 ホームページ下級裁主要判決情報
最後に、法律上の不許可事由を掲載します。
法律上の不許可事由
立地基準に該当する場合であっても,次の1から4のいずれかに該当するときは,許可することができない。
① 農地等の転用の確実性
次の1から7の事由により,申請に係る農地等のすべてを申請に係る用途に供することが確実と認められない場合
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農地等の転用を行うためにに必要な資力及び信用があると認められないこと。
「信用」とは,申請適格等及び過去の実績について審査する。
申請適格等については,申請者が自然人の場合,法律上行為能力を有する者であることが必要で,例えば,未成年者の場合には親権者等の同意を得ていない場合,法人の場合では,申請に係る事業の内容が定款又は寄附行為等において定められた目的又は業務に適合するものでない場合,「信用」があるとは認められないものとする。過去の実績については,過去に許可を受けた転用事業者が特別な理由もないにもかかわらず,計画どおり転用事業を行っていない場合には,「信用」があるとは認められないものとする。 -
農地等の転用行為の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていないこと
「農地等の転用行為の妨げとなる権利」とは,法第3条第1項本文でいう地上権,永小作権,質権,賃借権及び使用貸借による権利をいうほか,共有地の一部を土地所有者の1人が転用する場合の他の土地所有者の所有権をいう。
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許可を受けた後,遅滞無く,申請に係る農地等を申請に係る用途に供する見込みがないこと。
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申請に係る事業の施行に関して行政庁の免許,許可,認可等の処分が必要な場合は,これらの処分がなされなかったこと又は処分がされる見込みがないこと。
申請に係る事業の施行に関して法令(条例を含む。)により義務付けられている行政庁との協議を現に行っていること。
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申請に係る農地等と一体として申請に係る事業の目的に供する土地を利用できる見込みがないこと。
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申請に係る農地等の面積が申請に係る事業の目的からみて適正と認められないこと。
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申請に係る事業が工場,住宅その他の施設の用に供される土地の造成(その処分を含む。)のみを目的とするものであること。ただし,別表2の場合などは,例外的に認められる。
「遅滞無く,申請に係る農地等を申請に係る用途に供する」とは,速やかに工事に着手し必要最小限の期間で申請に係る用途に供されることをいう。
② 被害防除措置の妥当性
農地等の転用により,土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合,農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合その他の周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
- 「土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合」とは,土砂の流出又は崩壊のおそれがある場合のほか,ガス,紛じん又は鉱煙の発生,湧水,捨石等により周辺農地等の営農上への支障がある場合が該当する。
- 「その他周辺の農地等に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合」には,次のアからウの場合が該当する。
ア 申請に係る農地等の位置からみて,集団的に存在する農地等を蚕食し,又は分断するおそれがあると認められる場合
イ 周辺の農地等の日照,通風等に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合
ウ 農道,ため池その他の農地等の保全又は利用上必要な施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがある場合